2-1 手続き概要

相続手続きから相続税申告までの大まかな流れは次の通りです。

死亡に伴う行政手続き(死亡届の提出、年金受給停止手続き、等)など、死亡に伴う手続きは割愛します。

相続の手続きにスポットを当てて解説します。

相続手続きの流れ

 

多少前後することはありますが、スムーズにいくとおおよそ上記のような流れになると思います。

下記に、それぞれの手続きについて解説をしていきます。

 

①相続人の確認

相続(そうぞく)とは、自然人の財産などの様々な権利・義務を他の自然人が包括的に承継することをいいます。
相続は死亡によって開始(民法第882条)し、死亡には失踪宣告や認定死亡も含まれます。

相続においては、亡くなった方のことを「被相続人」といい、その方から財産を承継する方を「相続人」といいます。

相続人は相続開始前には推定相続人と呼び、被相続人の死亡による相続開始によって確定します。なお、相続人となり得る一般的資格を相続能力といい、法人は相続能力を持たないが、胎児は相続能力を持つこととされています(民法第886条)。

まずは、相続人を確認・確定する必要があります。

相続人の調べ方は別記事で解説します。

 

②遺言書の確認

遺言書がないか、確認をする必要があります。

遺言書は、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」という3種類があります。

このうち公正証書遺言であれば、公証役場で作成されているため、自宅等に保管していることが確認できなくても、最寄りの交渉役場で遺言の確認をすることができます。

また、公正証書遺言の場合、その遺言書の内容等について裁判所の確認を受ける「検認」という手続きを経る必要がありません。

自筆証書遺言、秘密証書遺言については、公証役場に保管はされていませんので、自宅や貸金庫等、被相続人が保管していそうな場所を探す必要があります。

但し、秘密証書遺言は作成時に公証人が関与しているため、最寄りの公証役場で「作成の有無」自体は確認することができます。(探す必要はあります。)

また、自筆証書遺言、秘密証書遺言は裁判所の検認を受ける必要があります。

 

③相続放棄(3ヶ月以内)

相続放棄(そうぞくほうき)とは、相続人が遺産の相続を放棄することをいいます。

被相続人の負債が多いなど相続に魅力が感じられないケースや、家業の経営を安定させるために後継者以外の兄弟姉妹が相続を辞退するときなどに使われます。

この相続放棄は、相続人であることを本人が知った日から3ヶ月以内に選択しなかった相続人は単純承認とみなされます。但し、家庭裁判所に期間の伸長を申し出ることができます。

財産よりも借金の方が多いことが確実な場合には、そのまま相続してしまうと借金の負担が重くのしかかってくることになります。

このような場合には、相続放棄を行って財産も借金も相続しない、という選択をする方が有利になる可能性があります。

3ヶ月という期限がありますので、注意が必要です。

 

④限定承認(3ヶ月以内)

限定承認(げんていしょうにん)とは、相続人が遺産を相続するときに相続財産を責任の限度として相続することをいいます。

相続財産をもって負債を弁済した後、余りが出ればそれを相続をすることができます。

この限定承認は、相続人であることを本人が知った日から3ヶ月以内に選択しなかった相続人は単純承認とみなされます。但し、家庭裁判所に期間の伸長を申し出ることができます。

 

⑤相続財産の把握

相続の対象となる財産を把握する必要があります。

相続は、被相続人の財産・債務(負の財産)を包括的に引き継ぐことになります。

その引き継ぐ財産を把握するために、相続財産の調査を行います。

現金、預金口座、証券口座、車、不動産、債権、貴金属など、財産を洗い出します。

また、借入金や未払いの支出など、負の財産も併せて洗い出します。

探し方は別途記事を書きますが、被相続人の自宅を探したり、貸金庫の中身を確認したり、被相続人が生前に話していた内容から推定したりして、財産の把握をするためのヒントから探っていくことになります。

 

⑥遺産分割協議

相続財産を洗い出したら、次は相続人の間でその財産をどう分けるかを決めることになります。

遺言書ですべての財産の分け方が指定されている場合には、遺産分割協議の必要はありませんが、遺言がある場合でも、分け方が指定されていない財産がある場合には遺産分割協議が必要です。

また、遺言がある場合でも、相続人全員の合意によって、遺言の内容とは異なる遺産分割協議を行うこともできます。

遺産分割協議は相続人全員で話し合って決めることになりますが、話し合いが成立しない場合には裁判等になってしまうこともあります。

無事に遺産分割協議が成立し、財産の分け方が決まったら、それを「遺産分割協議書」という形で書面に残します。

この書き方などは改めて記事を書きますが、財産の分け方を記載し、相続人全員が署名・捺印(実印)をします。また、複数枚にまたがる場合には割り印が必要です。

相続人が1人の場合には、話し合う相手がいませんので、遺産分割協議は不要です。

 

⑦名義変更

遺産分割協議が完了すると、その遺産分割協議の内容に基づき、名義変更を行います。

被相続人の預金口座は解約し、それを相続する相続人がその預金を受け取ることができます。

証券会社の口座や、車の名義なども同様に、相続人が引き継ぐことになります。

逆に、遺産分割協議が整わないと、金融機関もその預金が誰のものになるかわからないため、名義変更をすることができません。

そのため、様々な名義変更には遺産分割協議書とそこに押印された全員分の実印の印鑑証明書が必要になるケースが多いです。

また、遺産分割協議書に相続人全員が署名捺印をしているかどうか確認するため、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を収集して合わせて提示する必要があります。

 

⑧不動産登記

これも名義変更の1つではあるので⑦と同じですが、重要な手続きなので別記しました。

遺産分割協議が整い、不動産を誰が相続するかが決まると、不動産の移転登記をすることができます。

共有、という形で相続することも可能で、その場合は各相続人ごとに取得する持分割合を遺産分割協議書に明記します。

それに基づき、法務局で不動産の移転登記を行います。

登記は自分で行うこともできますし、司法書士に依頼することもできます。

また、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本が必要になります。

 

⑨相続税申告(10ヶ月以内)

順調に①から⑧までが完了したら、いよいよ相続税申告です。

相続税申告は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内にする必要があります。

相続人の確定、財産の把握、財産の分け方の決定、ができていれば、あとは相続税の申告書を粛々と作っていくだけです。

具体的な作成方法は、別途詳細に説明します。

⑦⑧⑨は順番が前後しても問題ありません。

相続税の申告が終わったあとに、不動産登記や名義変更をしても全く問題ありません。

ただ、相続税申告書にも被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本が必要になりますが、⑦⑧は原本を戻してもらうことができるため、先に⑦⑧をやっておくと戸籍謄本を1セット取得すればよいことになります。

また、預金の解約手続きが完了していないと、相続税の支払いを相続人が自分のお金で支払う必要が出てきてしまう可能性もあり、できれば⑦は先にやっておく方が望ましいと思います。

⑥の遺産分割が整っていない場合でも、一旦法定相続分で分割したものと仮定して相続税の申告はする必要があるので注意が必要です。ただ、この場合の申告についての説明は一切割愛します。

 

⑩相続税の納付(10ヶ月以内)

相続税の申告期限までに、相続税の「納付」も完了する必要があります。

現金で一括納付が原則です。

相続税の納付は、相続人がそれぞれ納付することになります。財産の分け方によっては、相続税の納付がある相続人・ない相続人が出ることもあります。

但し、他の相続人が相続税を納付しない場合、一定の場合を除き相続人は連帯してその相続税を納付する義務を負うことになります。

納付の手続きについても別途説明します。